PCR検査は新型コロナウイルス感染症の検査方法として有名になりましたが、PCR検査はコロナウイルスだけを判別するものではないことをご存知でしたか? この記事では、PCR検査の概要や種類、検査方法、抗原検査や抗体検査との違いについても解説します。
PCR検査とは
PCR検査とは、正式名称を「ポリメラーゼ連鎖反応」(Polymerase Chain Reaction)というウイルス検査の方法です。 ウイルスの遺伝子(DNA)を増幅させることで数を増やし、どのようなウイルスか検出しやすくします。 PCR検査はコロナウイルスのために開発された検査というわけではなく、従来から性病や肝炎のウイルス検査に使用されてきた方法です。また、遺伝子診断や親子鑑定などでも利用されています。
PCR検査の具体的な仕組み
DNAは二重らせん構造といい、2本のポリヌクレオチド分子がらせん状の構造を形成しています。
このDNAに熱を加えると、2本鎖から1本鎖のDNAに分離され、冷やすとまた2本鎖になる性質があります。この特性を利用して倍々ゲームのように同じDNAを増やしていくのがPCR検査法です。
熱を加えて1本鎖になったDNAに対して、プライマーと呼ばれる増やしたい配列と対になる配列を持つ1本鎖を準備します。それをDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)を使って合成し、2本鎖のDNAを作ります。これを繰り返していくと、1個→2個→4個→8個……というように同じDNAを増やすことができます。
例えばこの方法を30回実行すれば、2の30乗なのでおよそ10億個まで増幅することが可能です。増やすDNAにあらかじめ蛍光色などの標識をつけておくことでわかりやすく検出することができるのです。
PCR検査の種類
PCR検査にはいくつかの種類があり、検査時間や感度が異なります。
リアルタイムPCR法
PCRの増幅量をリアルタイムでモニターして解析する方法で、定量性が高くて正確、そして検査が速いのが特徴です。
従来のPCR法では測定するDNAの試験開始時の量が測定できないことがデメリットでしたが、リアルタイムPCR法では各サイクルで測定するため、1回のサイクルでいくつ増幅できたのかがわかります。
一定の量に達すると陽性判定が出るため、最初のウイルスの量が多ければ少ないサイクル数で陽性判定が出せます。
ただし、壊れたウイルスの遺伝子も検出してしまう可能性があり、実際に感染性のあるウイルスかどうかは区別ができないというデメリットがあります。
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)
DNAではなくRNAを対象としたPCR検査法のことです。RNAは1本鎖のため、2本鎖の特性を使った通常のPCRでは効率的に増幅することができません。
しかし、最初にRNAを逆転写酵素を用いて逆転写することでDNAに置換することができます。そして、それを通常のPCRで増幅することで効率的に検出することができるようになります。
コロナウイルスはRNAのため、逆転写を行ってDNAにしてからPCR法を実施します。
DNAシークエンシング法
DNAを構成する4つの塩基であるアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の配列を決定する方法です。
ウイルスや細菌が既知のものと比較したり、病原体の侵入経路や病原性などの推測に役立ちます。つまり、防疫対策に不可欠な方法です。
PCR検査の方法
PCR検査には被験者の細胞が必要になりますが、その採取方法によっても感度が異なることが分かっています。唾液検査
唾液採取は一定量の唾液を用いて検査をする方法です。
採取時に痛みを感じることもなく、医療従事者への感染リスクも低く抑えることができますが、検査の感度は後述する鼻腔検査、鼻咽頭検査よりも低くなります。
症状が出てから9日間は鼻咽頭検査に比べて10~20%の感度低下の可能性があり、10日以降では30~70%ほど感度が低下すると言われています。
この点をふまえ、唾液採取による検査は症状が出てから9日間のみ保険適応となっています。
症状が出て不安になりすぐに検査を受けたいという場合は感度高く検査が可能ですので、使い分けが重要です。
鼻腔・鼻咽頭検査
鼻の穴から長い綿棒を挿入し、抵抗を感じたあたりで鼻汁を採取する検査方法です。インフルエンザの時にやったことがある人も多いと思います。
反射や痛みが強く出てしまう人もいますし、咳などを誘発しやすいため飛沫感染予防の徹底されていない環境では医療従事者への感染リスクが高い検査方法です。
唾液検査に比べて感度が高く、国によっては渡航許可の条件に鼻咽頭拭いによるPCR検査の陰性証明書を求めるケースもあるため、海外渡航を検討されている方は注意してください。
基本的に鼻咽頭検査は病院やクリニックで直接行うもので、郵送では対応しておりません。※当院のPCR検査も鼻咽頭検査には対応しておりませんので、ご了承ください。
抗原検査・抗体検査との違いについて
コロナウイルスの検査実施数が増えていくにつれて、PCR検査以外にも様々な検査名を聞くようになりました。
新型コロナウイルスではPCR検査の他に、「抗原検査」や「抗体検査」という代表的な検査もあるため、ご紹介します。
抗原検査とは
抗原検査は、検査したいウイルスの抗体を用いてウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査法です。
現在感染しているかどうかを確認するために利用できますが、PCR検査よりは精度面で劣ります。特に無症状の方からの検出は難しいため、現在は症状の有無に関わらずPCR検査が推奨されています。
検査結果が15分程度で出たり、インフルエンザの検査も合わせて行えるのがメリットですが、抗原検査だけでは感染していないといい切れるほどの感度はないため、簡易的な検査だと思ってください。
抗体検査とは
抗体検査では、「過去にそのウイルスに感染していたことがあるか」を調べることができます。
ウイルスに感染すると、2~3週間で体内に抗体が作られます。そのため、現時点で感染しているかどうかを確認することはできません。
また、抗体自体は2ヶ月程度で消えてしまうとも言われており、抗体が検出されたから今後感染しないというわけでもありませんし、確実に過去にかかっていない保証をするものでもありません。
コロナウイルスにおいては、発症する2日前~7日後程度の期間では他者に感染させてしまう可能性があります。そのため、抗体検査が陽性(=抗体がいる)ということは、発症後2週間程度が経っていると考えられ、隔離する必要がないとも言えるでしょう。
PCR検査・抗原検査・抗体検査の比較表
それぞれの検査を表にすると下記のようになります。
PCR検査 | 抗原検査 | 抗体検査 | |
---|---|---|---|
検査目的 | 現在感染しているかどうかを調べる | 過去に感染したことがあるか 抗体ができているかを調べる |
|
検体 | 鼻咽頭拭い液 鼻腔拭い液 唾液 |
鼻咽頭拭い液 | 血液 |
調べるもの | ウイルスの遺伝子 | ウイルスのタンパク質 | 血液中のタンパク質 |
精度 | 高い | PCRよりは低い | 100%ではない |
ワクチン接種後の反応 | 陰性 | 陰性 | Sタンパク:陽性 Nタンパク:陰性 |
検査場所 | 検査機関による (郵送検査も可能) |
検体採取場所 (市販も検討されている) |
検査機関による (郵送検査も可能) |
所要時間 | 約1日 | 15~30分 | 約2~3日 |
検査の目的や精度はそれぞれ異なります。また、取り扱っている病院によっても様々な違いがあるため、必要に応じて問い合わせるなどして必要な検査を受けるようにしてください。
PCR検査の受け方
PCR検査の受け方には主に3通りの方法があります。
保険診療で受けられるケースと自由診療で受けるケースなども異なりますので、気をつけましょう。
クリニックや病院などの医療機関で受ける
PCR検査を行っているクリニックや病院で受ける方法です。
保険診療で受けられることもあるため、該当する場合は保険証の準備を忘れずにしましょう。
また、当日検査が受けられるクリニックと予約が必要なクリニックがあるため、事前に調べておくことをおすすめします。
PCR検査センターで受ける
木下グループや東亜産業など、民間企業が自治体や医療法人と連携して運営する検査センターです。
基本的には医療行為が不要だが検査の必要性がある方を対象にした施設のため、例えば発熱や濃厚接触者については検査を断られるケースもあります。
また、基本的に予約が必要なので事前に準備をしておくようにしましょう。
検査キットを使って郵送で検査を受ける
当院でも実施している郵送検査では、検査キットを使って自分で唾液を採取し、検査機関に郵送してPCR検査を行う方法です。
他者との接触がなく、安全に検査をすることができますし、忙しくて予約が取れない人でも自分のタイミングで検査をすることができます。
検査キットは検査機関から郵送されてくる場合と、市販されているものを購入する2通りがあります。また、検査機関によってはクリニックや指定の場所で検査キットを配布・回収している場合もありますので、ご自身の利用しやすいものを選ぶようにしましょう。
自費検査かつ陰性証明書の発行には別途費用がかかるのが普通ですので注意してください。
当院では有料PCR検査を実施しております
当院では有料PCR検査を実施しております。
当院ではどなたにも利用しやすいPCR検査の提供を目指し、以下のような検査を実施しています。
- 365日(土日祝日)いつでも検査可能
- 検査結果をメール通知
- 検体採取が簡単
- 変異株ウイルスも検出可能
- 高速検査が可能な機器を使用しているため、スピーディーに結果を通知
- 臨床検査技師による正確な検査
また、当院は精神科系のクリニックでもございますので、昨今のコロナ禍で精神的な不調にお悩みの方もお気軽にご相談ください。オンライン診療も受け付けております。